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東京基礎研究所(TRL)
研究プロジェクト
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  データ解析技術
 
 
 

リスク考慮型データ解析技術

 

プロジェクト概略

我々は、企業活動の様々な場面におけるリスクやチャンスを、正しく、定量的に評価し、 それを意思決定に役立てるためのデータ解析手法の研究を行っています。
例えば、リスクをうまく回避したり、逆にリスクをとってチャンスを狙いに行くような、リスクを考慮した意思決定や、 目先の利益や損失に踊らされずに、将来を考慮した長期的な目で行動を決定するという生涯価値最大化を行うような意思決定など、 金融工学におけるリスクマネジメントの考え方と、データマイニング・機械学習の技術を結びつけることによって、 ビジネス的にも重要な観点から、 柔軟な意思決定を可能にする手法などの研究を行っています。

我々はさまざまな企業活動のなかでもとくに特にマーケティング分野に注目し、 米国IBM T.J.ワトソン研究所をはじめとした各国の基礎研究所との密接な協力のもと、 マーケティングにおける不確定性を科学的にとらえ、分析し、意思決定を行うための新しい手法の研究開発を行っています。
また、コンサルティング部門との協業によって、これらの新しい技術を、 いち早く先進的なお客様へ適用するという試みを行っています。

研究項目

  • コスト考慮型/リスク考慮型データマイニング
  • 顧客の生涯価値最大化


コスト考慮型/リスク考慮型データマイニング

過去にデータベースに蓄えられたデータを手がかりに、 適切な対象(顧客や、ビジネス状況)に対して適切なマーケティングアクションを選択することは、 データマイニングや機械学習における分類問題として考えることができます。
この問題は、分類問題のなかでも特に、従来扱われてきた単純に成功/失敗の2値的な評価ではなく、 結果がもたらす経済的・心理的な損益を実数値で評価する「コスト考慮型学習」という枠組みで定式化することができます。

マーケティングを含む様々な意思決定のサイクル
マーケティングを含む様々な意思決定のサイクル



コスト考慮型学習では, 通常, 平均的な損失が小さくなる(あるいは、平均的な収益が大きくなる)ような意思決定ルールを学習するという戦略をとります。
この戦略は確かに「平均的には」よい性能を期待できそうですが, ユーザーが大きな損失が発生するリスクを嫌う場合や、 あるいは逆に、そのリスクをとってでも大きな収益を狙うような場合といった、ユーザーのリスクに対する嗜好を十分に反映しているとはいえません。
また、企業戦略を決定する重要な選択において、何度かの誤った意思決定が、 時に許容できないほど大きな損失を引き起こしてしまう可能性がある場合、このようなアプローチは必ずしもよい方法とはいえません。

このような場合に有効なのが、私たちが研究している「リスク考慮型学習」、 すなわち、決定結果に伴うリスク嗜好を反映した意思決定ルールの獲得を可能にする枠組みです。
我々は、巨大な損失が発生するリスクをできるだけ回避しようとする(逆に、大きな収益を追い求めようとする)という リスクマネジメント的な立場から、コスト考慮型学習をとらえ、これを「リスク考慮型学習 (Risk-Sensitive Learning)」とよび、 この問題に対する効果的で効率的な解法の提案を行っています。
この考え方は、マーケティングのみならず、 医療などの1件の重大な医療ミスが非常に大きな社会的インパクトを持ちえるような場面にも適用できることが期待されます。

これまでの我々の成果として、期待ショートフォールと呼ばれる、金融工学において用いられるリスク指標を学習の目的関数として導入し、 これを最適化するような意思決定ルールの獲得手法を新たに開発しました(鹿島: IBIS 2005, Kashima: SDM 06)。
期待ショートフォールは、同じく金融工学で一般的に用いられているバリュー・アット・リスクよりも適切にリスクを評価する指標として、 近年非常に注目を浴びている指標であることに加え、計算効率の面からも非常に好ましい性質をもっています。
我々のアプローチは、データマイニングに、これまであまり考慮されてこなかったリスクを積極的に扱うという考え方を持ち込んだ点で、 画期的な第一歩であるといえます。

期待ショートフォールの最小化によるリスク考慮型学習
期待ショートフォールの最小化によるリスク考慮型学習(鹿島: IBIS 2005 および Kashima: SDM 06, 参照)


顧客の生涯価値最大化

さて、従来のリターンとリスクに関する最適化のアプローチは、 1回1回の意思決定について最適なアクションを実施するという観点からなされていました。 一方、変動する経済環境下では状況は時間とともに変化していくうえに、 とったアクションが環境に対して影響を与えることも多々あります。 そこで、このようなパラメータ変化を企業にとって望ましい方向に変えるよう、 将来を見据えた上で最適な施策を打っていく必要があります。

近年、マーケティングにおいて一般的な考え方となってきた「顧客生涯価値の最大化」も同じ考え方に基づいています。 マーケティングアクションや環境の変化が将来にわたってお客様に与える影響を考慮したうえで、 1人1人のお客様にとって最適な商品やキャンペーンを提案することで、 お客様と企業双方にとって良い結果をもたらすための基本方針になります。

また、企業が顧客生涯価値の最大化を目指すときには、 既存の優良顧客だけではなく潜在的に優良顧客に変わる可能性を秘めた顧客をも重要なターゲットとして視野に入れる必要があります。 近年の厳しい競争環境の中では、このような潜在的な優良顧客層に対するアプローチは不可欠となってきています。

顧客価値の最大化についての模式図
顧客価値の最大化



一般的に、顧客価値の変化は心理状態をあらわした状態遷移モデルを用いて記述することができます。 とくに、マーケティングアクションが顧客の心理状態に影響を与えることを考慮したマルコフ決定過程(MDP)を利用することができます。 IBMの基礎研究部門では、MDPを用いたマーケティング最適化ソリューションとして、
  • チューリッヒ研究所の開発した顧客の生涯価値最適化ツール CELM (Customer Equity and Lifetime Management)
  • ワトソン研究所の開発した複数マーケティング・チャネル最適化ツール CCOM (Cross Chanel Optimized Marketing)
を用意しています。
東京基礎研究所では、これらの考え方をさらに推し進め、MDPにおけるリスクの見積もりを厳密にすることで、 リターンとリスクの最適化という観点から、最適な施策を見つける手法を開発しています。


  
 

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